令和5年度 事業承継研修(長島担当分)
2023/2/3
2024年1月26日に「事業承継のおける自治体と支援機関(金融機関等)の連携の在り方」というお題で、国や県、市区町村の職員向け研究の1コマを担当した。
この研修は、中小企業庁事業環境部財務課が担当、1月25日、26日の2日間の宿泊研修だった。
カリキュラムは以下のとおり
1月25日 | ・それぞれの自治体の課題認識の共有(グループディスカッション) ・地域経済において事業承継を推進する必要性,事業承継に関する現状の各種施策 中小企業庁財務課 田尻課長補佐 ・事業承継・引継ぎ支援センターと自治体の連携 静岡県 事業承継・引継ぎ支援センター 清水統括責任者 ・自治体先行事例① 菊池市 西川主事 菊池市商工会 鶴田課長補佐 ・地域における各支援機関の連携の現状について 中小機構 事業承継支援課 魚路中小企業アドバイザー ・1日目の研修内容を受けて(グループディスカッション) |
1月26日 | ・自治体先行事例② 豊橋市 商工業振興課 坂口課長 ・事業承継における自治体と支援機関(金融機関等)の連携の在り方 多摩大学 長島教授 ・支援機関との連携(信用金庫等) 東京東信用金庫 湯浅常勤理事 ・参加者それぞれの地域における事業承継の在り方(グループディスカッション) ・グループディカッションを踏まえて、各班発表、講評 中小企業庁財務課 田尻課長補佐 |
受講生は70名~80名。全国から集まった。当初この話を聞いたときは、事業承継をテーマに自治体職員が集まるのか?と疑問視したが、結果はこの通り。自治体の産業振興への想いは高いものがあると確認できた。
私の担当コマはいつものとおりワークシート形式で行った。以下は皆さんの許可を得てその集計結果を共有する。n=67
Q0 産業振興及び事業承継支援に関わる職員数(専任、正規かどうかなどあいまいな部分もある)
産業振興に関わる職員数
市区町村 | 都道府県 | |
~4名 | 13 | |
5名~9名 | 10 | 1 |
10名~19名 | 9 | 3 |
20名~29名 | 2 | 4 |
30名~39名 | 5 | 2 |
40名~49名 | 3 | 1 |
50名~ | 1 |
事業承継に係る職員数
市区町村 | 都道府県 | |
0名 | 8 | |
1名 | 15 | 1 |
2名 | 12 | 5 |
3名 | 8 | 5 |
4名 | 3 |
Q2 多摩大学(ながしまゼミ)のプロジェクトで興味を引いたもの(複数回答)
3つのcha・cha・cha/オンライン交流ラボ「地域金融機関最新事情」/タマリズム/観光に関する発表会/ロボットで繋ぐまちづくり委員会/Odakyu Innovation Roots/おだじぎょ/月刊信用金庫コラム寄稿/中小企業いきなりインターンシップ動画/探究の授業の探究/多摩未来協創会議コラム寄稿/ハダで感じろ!ハダノ・ニューオデッセイ!/次世代事業開発人材育成プログラム/TAMA Social Impact Lab/社会課題から始める Well-being なまちづくり研究会/住友金属鉱山地域貢献/地域の未来予測を踏まえた多様な主体との広域的な協働のあり⽅に関する調査研究/教職員会社見学会/オトナゼミinびより
Q2 興味を引いた理由(順不同、一部修正)
- 町内の若手流出が問題となっている中、今いる中高生への街の魅力を伝える場になるため。また観光を主力としているため参考になる
- 採用に困っている事業者と学生との関わりは雇用増に繋がるためよいと思った
- 若者というキーワードで組織をつなぐ
- 取組に困っているところに目を向けて連携する
- 大学の創業・企業ネタ、土台作り
- 伝えたい相手のひとつ前を対象にする
- 突然んお企業訪問でその様子を学生が体験することは企業の実態がわかって良い
- 各機関との連携や連携の仕方を模索する取り組み
- 地域課題を直視し、効果が見込める
- 地域内の連携を促すきっかけづくり、また地域内の定着を促す支援にもなりうる
- 大学教員や銀行員などのクローズドなイメージのある業界の方々の話を聞けること
- 長く続ける事業のため、それなりの成果があるのかと感じる
- 地域の企業の採用を促すことにつながる
- 大学生を巻き込み、大人発想にはない新しい事業や取り組みを創出する点
- 若者の域外流失と人材確保の問題が深刻なため、このような取り組みが必要であると感じた
- 連携についての悩みどころに視点があるところ
- 経済を下支えする企業の存続と人材育成の視点
- 教員の皆さんに現場を見せると教育内容が変わる
- 情報共有、ノウハウの蓄積ができて素晴らしいと感じた
- アイデアの発表ではなく良いアイデアを「買う」仕組みがいい
- 中高生の時から地元企業を伝える
- 予算がかからずすぐに取り組めるところ
- 地元企業のことを若者に知ってもらうことが人材確保の第一歩だと思う
- 学生のうちに地元企業が行っている事業を知ることはいいこと。地元の就職につながる
- 若者が頑張っているのがいい。色々な発想が生まれるように既存に縛られない
- 地方と都市部の情報格差が大きいなどのギャップ解消のきっかけになるかも
- 企業の取材を行うことは若者に地域産業を知ってもらうきっかけになるほか、企業側が若者目線の企業に対するニーズ把握ができる
- 我が地域でも実施したい
- 支援する側と受ける側両方にメリットがある
- 工場見学やキャリア教育に興味がある
- 中小企業はIT導入に苦労することが多い
- 教職員への情報提供という視点はこれまでなかった
- 大学教員からの視点で見て知って発信出来たらより多くの若い人に伝えられる
- 発表だけで終わらない学生が本気で取り組むのがよい
- 教職員だけでなく、市職員についても見学会があってもよい
- 楽しそう。業務としても連携できそう
Q4 産業振興政策の背景、展望、問題点からの気づき(順不同、一部修正)
- 若手の人材不足、人員不足
- 産業構造の偏り
- DX対応の遅れ
- 産業に精通している職員が少ない、専門家を増やしたい
- 自治体としての財政力向上に産業振興は不可欠
- 国の施策の限界、国と自治体の役割分担をどうするか
- 産業振興分野をどの範囲まで政策の対象とすべきかの判断が難しい
- 地域を支店とした政策体験の不足
- エビデンスに基づいた政策立案能力がゼロ(上司の思い付き)
- 統計やデータを分析できる人材、教育を受ける機会がない
- 国からの交付金をいかに使うかという視点中心のため、効果判定や将来の展望がない
- 県が直接振興支援する人材がいない
- 公平性を重視しすぎてメリハリをつけられない
- ネガティブな市長、部長・・・
- 産業政策は産業振興の分野以外にも関わる分野
- 多様化が進む中、庁内連携がさらに重要
- 人事異動により担当が3年くらいで変わるのが大きい。事業内容は引き継げるが、思いや熱量は引き継げない
- 産業振興は突き詰めると個社支援につながり、行政がどこまで行うのか?全体支援になると総花的な施策になり結果成果が見えない
- どうしても個社支援になりがちなので、対象の選定が悩ましい
- 産業振興に係る予算などがあまり重要視されていないように感じる
- 学んでも人事異動がありリセットされる
- 財源確保という点はご指摘のとおり。一方で首長トップダウンだと予算化されやすいが、産業振興の明確なビジョンが見えないと期待ができない
- 産業振興には答えがない+すぐに結果が出るのもではないためなおさら予算確保がしづらい
- 担当者がかわるとゼロになるケースが多く、アイデアがあっても立案にまで至らない
- 高齢化、人口減少を避けては産業振興は考えられない
- 日本全体の問題なのに、各自治体が頭を納屋末世ないといけないのが・・・
- 人の奪い合い
- 部門間での情報共有が重要、組織間での情報共有が必要
- 前例踏襲
- 縦割りの弊害
- 事業承継は全産業に通じる課題だが、担当所属のみの仕事になっている
- 補助金などの財源がつけば有効だが、知恵がない
- 財源不足(一財で予算確保するハードル)、職員のスキル不足(やらないといけないという意識はあるが何をすればいいかがわからない)、公民の線引き(ここは民間領域で行政がやる仕事ではない)→結果、インパクトに欠ける政策
- 今後、人口減少が加速していく中で産業競争力をいかに維持していくか
- 経験、ノウハウを持つ職員が少ない(地域企業や各ステークホルダーに関する知識が少ない)
- 全体に共感しました。とくにどこまで支援するかというのはとても悩ましい
- 自治体が〇〇産業を成長させたいと思っても今の時代は変化が激しく難しい
- 経済波及効果が高い大企業への大きな補助や支援は可能だが、中小企業への面的支援は財政的に至難
- 産業振興は延命措置的な施策ではなく、成長・発展につなげられる施策が必要
- モデルケースとして地域を牽引できる企業の創出が難しい
- 地域の活性・発展には産業振興が重要だということを町・事業者双方が認識すべき
- 事業者がしたいことをサポートするのが本来の姿だが、こちらからお願いして実施してもらうケースも多い
- 専門知識を持つ機関との連携が重要
- 国や県の施策と市町村とのズレが生じている
- 仕事の成果を実感できない
- 庁内各部門の事業領域はビジネス視点で課題解決が必要(リソース不足)
- 大学生に企画してもらって中高生にアプローチするのが面白い
- 財源確保が本当に厳しい
- 新しい事業の必要性を庁内外に伝えることの難しさ
- 政策を考えるための市内の課題を認識している職員が少ない
- 素人の集まりで方向性が定まらず
- 事業の幅、専門性に対して職員の数、知識が不足しがちな印象
- 短期で結果が求められる(市への利益)。その根拠を明確に示す必要があり予算確保は難しい。また、必要であるかもしれないが、職員の知見が浅く明示できない。
Q6 「市町村の産業振興策が成功するための10のポイント」の中で共感できたもの(複数回答)
Q8 広域連携を行うメリットは?(順不同、一部修正)
- 財源を今までよりも余裕をもって確保できる
- ヒト、カネの共通化
- 地域外の事業所を参考にすることができる
- セミナーなど受講場所が限られず、人目を気にせず参加できる(特に事業承継)
- 住民、就業者に対する広域的な共通サービスの提供
- ハードとしての機関を置かなくても案件ごとの機動的連携が可能
- 各信金の営業エリアの市町村で連携を図り、信金が持っている情報を活用すること
- 対外的に広くアピールできる
- 近隣市とのダブル解消
- マンパワーのない自治体の支援
- ノウハウの共有
- 様々な視点から議論ができる
- 一緒に取り組みことで仲間ができる
- 隣町までわざわざでかけない
- 費用の圧縮
- 近隣自治体と仲が良くないので庁内協議が進まない
- 足の引っ張り合いにならない
- 支援人材の適切な配置(専門性の高い課題への対応が実現)
- 新たな気づきが得られる
- スケールメリットがあるので否定しないが、連携先の動きがとても悪いのが難点である
- 県レベルの話だと隣県との連携が考えられるが、実際には局や機構との共催が現実的
- 文化圏が共有な地域であれば県をまたいでも連携できる
- 公民連携の可能性拡大
- 中規模以上の自治体は自前主義で連携するインセンティブが低いのではないか
- 市民のメリットが大きい
- 市域を越えた産業支援体制の確立
- 小さいところが大きいところに飲まれる可能性がある
- 事務局となる自治体以外の事務の軽減
- 広域を対象としたプロモーションができる
Q99 ご意見ご感想をお願いします(順不同、一部修正)
- 具体的な事例を含め大変参考になりました
- 貴重な講義ありがとうございます。後日事業承継、移住定住策についても相談させていただくかもしれません
- 県が中心となって、市町村連携を促せないか検討していきます
- 商工予算で一番使われているのが利子補給との話があったが、預託金という性質上年度の最後に戻ってくるため実質的には違っている。こちらで調べたところによると企業立地の予算がとびぬけている。
- 新しい視点で考えることができました
- 改めて産業振興に関わる身としての勉強不足を思い知りました。引き続き公民連携、広域連携、その他多くの実践的な産業振興の手法について、ご助言、ご指導頂きたいと思う講義でした。
- 紹介頂いた書籍を読みたいと思います。
- 市町村の取り組みの内容が主でしたが、県単位のお話(中山間地域、離島への展開等)もぜひ聞いてみたいと思いました。
- 事業承継に限らず産業振興施策に関する取り組み方について参考になりました。広域連携について意識しながら業務に取り組みたいと思います。
私も整理しながら、ひとつひとつのコメントからたくさんの気づきを頂きました。ありがとうございました。