東京魚類容器株式会社にゲストスピーカーをお願いするまで
2019-12-19
「事業」デザイン論Ⅱの「授業」デザインを行なった!?
秋学期の事業デザイン論Ⅱのシラバスは最終的にこのような形になった。アクティブラーニングの技法でいえばどこにあたるかは今後整理予定。
①データの確保(教員) 大学のキャリア支援課から昨年の就職先会社データをもらう。 |
②会社概要の作成 就職先会社データを社名と住所でユニークにして、「会社概要」を作る。ホームページはもちろん、帝国データの企業年鑑などを閲覧して作成。ネットだけでは調べきれないことを学ぶ。 |
③会社案内の作成 作成した会社概要のうち、興味がある会社を1社選び、「会社案内」を作る。会社案内は、会社概要、沿革、採用情報、ピクト図、ビジネスモデルキャンバスという構成。 |
④会社案内の学びあい 4人グループになって、お互いに調べた会社を紹介し合う。自分の調べた会社以外に3社の概要を知ることができる。これを数回繰り返す。 |
⑤質問力 質問項目をまとめ、全員で共有する。 |
⑥ゲストアンケート 会社の共有がある程度進んだところで、ゲストとしてお越しいただきたい会社を投票する。 |
⑦ゲスト依頼(教員) ゲストとして希望が多かった会社に登壇依頼する。キャリア支援課から紹介してもらい、直接訪問して依頼する。 |
⑧事業企画書作成 登壇頂く会社のピクト図とビジネスモデルキャンバスを作成したうえで「事業企画書」を作成し共有する。 |
⑨事業企画書プレゼン ゲストの前で、事業企画書を発表し、コメントを頂く。経営者や社員(今年の卒業生)に会社紹介をして頂く。 |
12月19日は第14講目。上の表でいえば「⑨事業企画書プレゼン」。⑥で選ばれたのは「東京魚類容器株式会社」。豊洲市場にある発泡スチロール容器やドライアイスを卸売・小売りする会社。登壇を快諾して頂いた。
まずは、学生からの事業企画書プレゼン4本。3分間の制限時間。ピクト図やビジネスモデルキャンバスを活用して、今後のビジネスアイデアをひねり出す。ドライアイスが高騰していることを見つけたり、発泡スチロールに記入するクレパスに焦点をあてたり、全体のブランディングのためのネーミングを考えたりと多彩な内容。環境への配慮、折りたためる発泡スチロール容器・・・たくさんのアイデアが生まれた。
ひとつひとつのプレゼンに対して、原取締役からコメントを頂く。
その後、新入社員の木谷花子さん(今年の多摩大卒業生)のプレゼン。登壇依頼にお邪魔したときに、ピクト図とビジネスモデルキャンバスの説明をしたところ、自社のモデルを独学で学び作成してきてくれた。
BtoBであり、市場というニッチな場所。発泡スチロールという商品。学生にとってはあまりなじみのない会社を、木谷さんは具体的な事例をもとに説明をしていく。20名前後という小さくて濃い組織の中で、コミュニケーションをとりながら「いい会社」にするために努力している姿が眩しい。
最後に、原社長のプレゼン。保険会社から実家の仕事の後継ぎへ。サラリーマンから経営者になったなかで、苦労話を具体的に綴っていただく。「社員ともめて自転車を投げられた話」など学生にはあまりにもインパクトのある話が続く。いくつものハードルを超えながら着実に業績を伸ばし、社風を良くしていく。社会にでたときに、この話を思い出す学生も多いだろうなと感じる。
卒業生が来るということで、ゼミの指導教員や後輩も集まってくれた。
学生の到達目標は、会社を知り、名前の知らない会社や業種にも興味を持ち、感じてもらうこと。ピクト図やビジネスモデルキャンバスで事業企画が作成できること。
授業のやり方などは、まだまだ修正しなくてはいけないが、大枠のやり方は見えてきた。
★学生の感想レポートより抜粋
- 私が東京魚類容器株式会社さんで魅力に感じた点は社員のことを大切にしている点です。今回の東京魚類容器株式会社の代表の原周作のお話を聞いて、なぜそこまで社員のことを大切にしているかが分かったような気がします。原さんは今まで過酷なキャリアを送ってきて、様々な失敗などを繰り返してきました。そんな体験から会社のやり方を考えていき、行きついた先が今の社員が一丸となって働く東京魚類容器株式会社さんだと思いました。
- 取引先や扱う資材の詳細などのネットだけでは調べられない情報が多く存在するということです。多くの情報がインターネットで調べられるようになり、ネットで調べれば十分という風潮が強くなっており自分もネットがあれば下調べは十分と思っていたのですが、今回ゲストスピーカーの方の話を聞いて、現場で働く人間の生きている情報を知ることが重要であることを知り、ネットだけでなく様々な筋から情報を集積していく事が大切であることが分かりました。
- 事業の話では、斜陽産業の会社は他を巻き込んで大きくなって行くしかない。という話は今後の社会生活で重要なことだと思いました。自分自身の就職する業界が斜陽産業であるため、他を巻き込み事業を行っていくようになるんだと自分自身の状況も重ね学べました。
- 多摩大学のOGも、とても楽しそうに仕事を行っていて私も早く社会に出たいなと少しだけですが、感じることができました。
- 原社長のお話を聞く際に、あり方「to be」とやり方「to do」を軸に話すとおっしゃっていて、とても大事にしていると感じました。実際にお話を聞いた際に、私もこの考え方を取り入れてみようかなと思いました。思うことだけとやってみることは、やはり異なることであり、周りから見たら地味なことで何にもならないと思うことでも、自分が信じて続けていれば何かしら自分に返ってくるのかもしれないと思いました。だから、私も今自分がやっていることが後になって後悔することかもしれないけど、何か報われることがあると信じて頑張っていきたいと思います。
- 自分は主要パートナーの項目のところがメーカーとざっくりとまとめて書いてあるのに対し、ゲストの方は一つ一つ会社名が書かれていた点が大きな違いだと感じた。他には
届ける価値の項目のところが機能性、利便性と書いているのに対し、ゲストの方は近いからすぐに買える、早くて対応力があると具体的に書かれていた。だから、全体的に自分が見習うべきところは相手に伝わりやすくするために、細かい内容を書くことが大事だと思った。そのためには、情報収集力が必要だと思うので、多くの資料に手を出していきたいと思った。 - 新事業を提案するにあたって、私たちは、帝国データバンクやネットからの情報を元に講義内で東京魚類容器株式会社様のピクト図やビジネスモデルキャンバスを作成した。事業内容や取引先、届ける価値などについて可視化することで、企業の特徴をきちんと捉えることができたと感じていた。しかし、実際に働いている木谷さんの考えるビジネスモデルキャンバスと比較すると大きく異なる点がいくつもあることがわかった。
- 原社長の話は全て印象に残っているほど、学びの多いものであったと感じた。「やり方」だけでなく「あり方」を考えることが重要であること、自分だけでなく「社員のあり方」にも目を向けていることなど、社長の人間力に魅了された。ピクト図に関しても、商品とお金の流れはシンプルであるが、届ける価値は多様であった。投影されたピクト図をみたときに、自社が届けているみえない価値について、日常的に考えていないとあの図は書くことができないだろうと思った。講義後にお話をさせていただいた際に、「
致知」の話が出たので、久しぶりに読んでみようと思った。
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