キングスカイフロントは世界最先端のライフサイエンス研究開発エリア
2019-09-13
キングスカイフロントに伺った。川崎殿町地区にある世界最高水準の研究開発から新産業を創出するオープンイノベーション拠点。目の前が羽田空港で、来年橋が架かると徒歩で空港に行けるほど近い。
約40haに及ぶこのエリアには、いすゞ自動車川崎工場、三愛石油が存在したが、生産ラインを藤沢に移すことになり、同敷地の西半分を都市再生機構(UR)が、東半分をヨドバシカメラがそれぞれ取得した。
D地区のヨドバシカメラの物流。このバリケードの向こうに道があり、左に羽田空港への橋ができる。
広大な空き地をどうするか?国道は浮島からのトラックなども多く交通渋滞が激しい。
物流基地を作るわけにも、コストコなど商業を入れるわけにもいかない。そこで、ライフサイエンスに絞った工業団地をつくることになった。
最初に決めたのが、実験動物中央研究所。市内に立地していたが、近隣の住宅化の波に押され移転場所を探していた。
その後、国家戦略特区、国際戦略総合特区、特定都市再生緊急整備地域などに指定され、現在では67機関が進出を決定している。2019立地機関レポートによると、就業者数1,400名、内研究者500名、博士号取得者300名。
川崎キングスカイフロント東急REIホテルと郵便局、セブンイレブン以外はほとんどが研究開発拠点。
ホテルの5Fからは、多摩川対岸の羽田空港が正面に見える。スタッフと話すと、夜が素敵ですよと。
リサーチゲートビルディング殿町2にある「川崎市キングスカイフロントマネジメントセンター」で嶋村課長にお話しを聞く。立ち上げの頃から関わっているということで、とても分かりやすいお話が聞けた。
・製造ラインは付加価値がかなり高くないとやっていけないから研究所になっていく
・工業団地を作って終わりではなく、中小企業とのマッチングを行っている来年度からは、川崎市産業振興財団に協力してもらっていく(産業振興財団や市役所のフットワークが実に軽やかなのにいつもびっくりする)
・大田区とも経済連携を締結していて、羽田の整備が進み、大きなホールができる予定なので、こちらにないものは共有させていただく(これは多摩エリアでもヒントになるはず)
・横浜銀行、川崎信用金庫をはじめ、全国の金融機関とも連携していきたい
・拠点を構える企業のほとんどは、空港が近いが理由。
・税収の40%が湾岸地域で稼いでいる。北部地域の学校など公共施設の維持にも使われている(海から丘まで広がる多様な地域だからこそ)
・島津製作所は羽田に近い特性を活かし、すり合わせをするための開かれた研究所を予定
・ペプチドリーム。駒場にいたけど手狭になったので、こちらに来た
・ジョンソンエンドジョンソンはトレーニングセンター。アジアの先生にも来てほしいということで作った様子
・従業員は、公共交通機関や車を使っている。都心から来ている人も多い。
大手企業が移転した跡地の活用として生まれた知の拠点。羽田に近いという強みを活かしてほぼ完売。日産自動車の跡地や日野自動車の今後についても参考になるとは思うが、さて、羽田空港の代わりになるものは・・・。
経済的波及効果については、こちらでまとめられている。橋などを建設する部分も含まれているので何ともいけないが、単体で見た場合はそれほど大きな効果があるとは思えない。税収はもちろんあるが、雇用や他の企業への波及効果は大きくはないはず。今後の企業立地をどう考えていくのか?もっと事例を検討してみたい。